滞仏植物記

植物のかたちを研究する学生のフランス滞在日記

巴里を歩く―フランス国立自然誌博物館

昨日の記事に引き続きパリの記事です。今日は10月19日に訪問した「国立自然誌博物館」についての記事です。その名が示す通りここもまたデロールと同じように自然誌――つまり博物学にまつわる場所です。それも世界屈指の規模の。

 

「フランス国立自然誌博物館」こと MUSÉUM NATIONAL D’HISTOIRE NATURELLE 

www.mnhn.fr

 

博物館といっても、その施設は一か所にすべてが集中しているわけではありません。国立自然史博物館が管轄する施設はパリの数区に存在し、さらにパリ外にもいくつも関連施設があります。その所蔵標本数は極めて多く、アメリカ国立自然誌博物館とロンドン自然誌博物館に次ぐ大規模収蔵施設です。そのうち今回見たのはパリ5区の植物園内にある施設です。

公式ホームページによれば、5区の植物園内では七つの場所が公開されているそうです。

Sept lieux de visite sont ouverts au public : 

 

 すなわち、

  1. 進化大展示室
  2. こども展示室
  3. 古生物および比較解剖学展示室
  4. 地質および鉱物学展示室
  5. 植物学展示室
  6. 植物園大温室
  7. 植物園付属動物園

の七つです。このうちぼくが今回見ることが出来たのが 1,3,4,6 の四つです。ホテルは博物館のすぐ傍、かつほぼ一日費やしたにもかかわらずすべてを見ることはできませんでした。これでもそれなりにタイムキーピングをしていたつもりでした。が、フランス博物学の化身のような施設が誇る圧倒的物量の前には、たかだか一日程度ではほとんど何も為すことが出来ません。

 

正面の門から入ればまずラマルクがうわの空であいさつし、

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ジャン=バティスト・ラマルク - Wikipedia

一番奥に構える進化大展示室前ではビュフォンが本を片手に一瞥します。

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ジョルジュ=ルイ・ルクレール・ド・ビュフォン - Wikipedia

 

さて、訪問した施設を一つ一つ丁寧に紹介…しようと思ったのですが、いかんせん物量が尋常ではなく、それに伴って書きたいこと・書くべきことも半端な量ではありません。当然、一介の学生がブログのひとつの記事としてまとめるのは時空間計算量の観点から現実的な判断ではないと思われたので、今回は俯瞰的にさっと書くことにします。写真は一枚づつに限定し、他の写真はしばらく抽斗の奥ということで…

 

1.進化大展示室

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いきなり本丸の紹介です。進化論、古典的交配育種、それから最新の分子生物学的知見まで「進化」をあらゆる角度から解説します。この展示室の特徴は何と言っても剥製。どの方向を向いても剥製だらけという濃密な空間です。それから照明が独特でなんとも幻想的。

 

3.古生物および比較解剖学展示室

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進化大展示室が「剥製」なら、こちらは「骨」です。といっても、植物化石や軟体動物の殻、液浸標本もあります。ずらりと並んだ骨格は圧巻であり、どこかクラシックでオーセンティックな科学の雰囲気を感じることが出来ます。

 

4.地質および鉱物学展示室

f:id:shiryukirie:20181024052337j:plain地質および鉱物学展示室は規模こそやや小さめに感じますが、きらびやかさと豪華さでは筆頭でしょう。写真では伝わりにくいですが、ここに写っている鉱石すべて1メータはあり、重さにすれば数トンはくだらないでしょう。他にも色とりどりの宝石や不思議なパターンを有する瑪瑙、信じられないほど整然とした秩序を見せる結晶など、目を引く存在ばかりです。

 

6.植物園大温室

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大温室はどちらかと言えば落ち着く場所です。静謐が張り付く熱帯雨林エリアやあらゆる気配が口をつぐんだような乾燥地エリアがあるかと思えば、ニューギニアエリアでは遠くから人間が始まる前の喧騒を聞いているような感覚がしました(この欄、言語化しようとしたらなぜかポエティックになりました。仕方ないですね)。とにかく上三つと違って実際に生き物を展示しているためか、ちがった感慨がわいてきます。

 

以上、駆け足でざっと紹介してみました。本当は全く紹介できていませんが、実力不足を潔く認めて万人に訪問を強く勧める次第です。実際に体験してみるということの情報量の多さが身に染みるような場所であり、デジタルアーカイブ全盛の時代が到来しても(既に到来してる?)こういう「生の標本」を保存する価値が決してなくなりはしないことを強く感じます。展示内容については、関連するトピックを取り上げた時にまた改めて紹介することにしましょう。