滞仏植物記

植物のかたちを研究する学生のフランス滞在日記

街を歩くーモンペリエ大学植物園

今日は街を歩きました。といってもすでに歩いたことがあるところが中心だったのですが、こっちに来て初めての休日だったので朝からゆっくりと歩き回ることが出来ました。

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とにかく日光と風が気持ちよいです。暑いですがジメジメしてなくさわやかな暑さ。

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これ、だまし絵になってます。気づきましたか?

市街地をしばらく歩いたあと、ついにこの場所へ足を踏み入れることにしました。

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モンペリエ大学植物園

解説は例によってWikiで失礼します。

モンペリエ植物園 - Wikipedia

モンペリエ大学植物園は16世紀につくられたフランス最古の学術用植物園で、創始したのはピエール・リシェ・ド・ベルヴァルという人物であるそうです。園内のベルヴァル像はなんだか威風堂々というか誇らしげですが、その功績をもってすればむべなるかな。

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ベルヴァルの像

とにかく素晴らしい場所でした。正直、そんなに大きくはありませんし観光地として賑わっているわけでもありません。むしろ長閑で静かな時間が流れていて、フランスの植物学史に思いを馳せるにはちょうどいいくらいでしょう。

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元々が薬草や作物を育てる場所だった名残か百花繚乱という風情ではありませんが、それでもハスのようなおなじみの植物を見た時は少しうれしくなりました(正直に言って、まだ郷愁を忘れるほどにはこちらに馴染んでいないということかもしれません)。

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ミツバチが花の蜜を集める光景は植物園以外でもよく見かけます。ハーブ系の植物の花の周りを飛んでるのを見かけると、さぞおいしい蜂蜜が取れるのだろうと期待してしまいます。

 

モンペリエ大学植物園は12時から開園なので午後の散歩にはぴったりの場所です。この時期は日が長いと先の記事でも書きましたが、おかげで20時くらいまで開園している……と書いてあったようなうろ覚え。

とにかくこの植物園をぼくは気に入りましたので、また折りに触れて調べたり見聞きしたことを書いていきたいと思います。

夜は短し、歩けよ学徒

ご存知の方も多いかと思いますが、フランスの夜は短いです(緯度が北海道並みかそれ以上だそうですから)。

この時期だと9時はまだなんとなく明るく、9時半を過ぎてやっと真っ暗になります。

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だいたい9時くらいでもぼんやり明るい

こちらに着いて今日で一週間。解決しないといけない問題もまだまだありますが、とりあえず悪くないスタートを切ることができたと思います。とはいえ、やはり疲れが溜まっていることを少し自覚しました。今晩はゆっくり寝ようと思いこまごましたことを片付けていると、同居しているコロンビアの留学生が Estivales に行くと言って8時ごろ家を出ていきました。

www.lagazettedemontpellier.fr

最初、「フェスティバル」と聞こえました。「ああ、お祭りか」と思っていたのですが、調べてみると、夏の間、金曜の夜に屋台やイベント会場ができて23時過ぎまでみんなでワイワイとやる…という趣旨のイベントがあるようです。そもそも estival という単語が「夏の」という意味らしく、「夏の夜のお祭り騒ぎ」という一種の言葉遊びなのかもしれません。

 

疲れは間違いなく蓄積していそうです。しかしあまりに気になってきてしまったので、急遽市街の中心部に繰り出すことにしました。

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夏の夜は短く濃ゆい

会場まで向かう途中、人だかりができているのが見えてきました。路上でダンスやパフォーマンスを披露しているようです。その周りにたくさん人が集まっていて、時々歓声が上がります。あちこちのカフェやレストランでみなさん大いに仲間との飲食を楽しんでいるようです。子供連れも多く、老若男女のグループがあちこちで夏の夜を楽しんでいます。

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会場入口と思しき場所

しばらくモンペリエの夜景を楽しみながら歩いていると、会場入口と思われる場所にたどり着きました。いざ、中へ…

 

…と思ったのですが、ここで引き返してしまいました。やはり疲労も感じてきたところでしたし、かなりの人と轟音でアドリブで楽しむには余力がなかったというか……来週もまたあることですし、ここは慎重に身体を大切にすることにしました。ただ、惜しかったのがワイン。ここモンペリエはフランス有数のワイン生産地。それらのワインがここには集結しているらしいのです。ぼくはお酒大好きですからこればかりは断腸の思いというか……。まあ、しかし、それもこれからの楽しみにとっておくことにして昼間の暑さから少し涼しくなってきた帰路についたのでした。

 

* * *

それにしてもフランス語会話は難しいです。読むのはそこそこできるんですが、話すのはさっぱりです。ただみんなフランス語ばかり(当然)なので来週以降はもうちょっと頑張ってみます。それから植物検疫の問題。関係諸氏に色々とお手数かけてしまっているのが心苦しい。

 

déjà-vu

先日、街を歩いていて公園の名前にふと引っかかりました。

 

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[Square PLANCHON]

 

プランション。どこかで見たようなと思っていたら、修士課程のとき、自分が研究で扱っている植物の歴史を調べようと古い文献を読んでいるときでした。

ジュール・エミール・プランション - Wikipedia

Wikipedia で恐縮です)

 

そのときはあまり強くその名前を意識してなかったのですが、著名な植物学者だったようで恐縮しました。しかもモンペリエにゆかりのある人物だったとは。この公園の名が実際に彼に由来するのかは未確認です。しかし考えてみるとフランス最古の学術用植物園はモンペリエ大学の付属薬草園ですし、この土地はフランスの植物学の発展に大きく貢献したいわば「聖地」なのかもしれません。
(ねがわくは、その歴史の末端の末端に微細な微細な文字で自分の名前を、とも思います。)

 

* * *

 

ところで、このブログのスタイルがどんどん「あのブログ」にアトラクトされているのを感じます。そもそもこのブログをはじめようと思ったきっかけの一つは「あのブログ」の終わりに衝撃をうけ、慟哭し(ウソ)、「やんぬるかな、自分の読みたいものは自分で書こう」という開き直りなのでそれも仕方のないことかもしれません。(そのブログへの思い入れはそのうち書くかもしれません。いや、いい加減なことは言わないでおこう。)

 

朝のコーヒーブレイク

今朝はコーヒーブレイクに誘われました。

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フランス語はそれなりに頑張ったはずなのに全然聞き取れないし、単語もほぼ忘れているのでリハビリが必要そうです(日本から持参したお土産のお菓子は気に入ってもらえたようです。雷おこしとか、和三盆とか)。

 

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お菓子の飾りでついてきた鬼灯のおもちゃ。フランス語では学名そのままにフィザリス Physalis。ところが慣用名は "l'amour en cage" 「籠の中の愛」 と言うそうで、変形した萼の中に果実ができるこの植物の特徴をぴったりと言い表しています。しかもポエジーがあるところが「フランスらしい」ところです。

はじめに

最初の記事ですので、簡単な自己紹介を。
ぼくはある大学で植物のかたちを研究している学生です。このたび3か月弱の間フランスのモンペリエという町にインターンシップをすることになり、その滞在記を記すことにしました。

途中でやめてしまうかもしれませんし、興がのれば帰国した後も続けるかもしれません。内容もなにも宙ぶらりんです。とにかく体裁は全て仮ですのでデザインやなにやらは随時調整を図っていくつもりです。

こちらは8月20日、はじめて学校に顔を出しました。そこは農学系グランゼコールらしいです(*追記)。いろいろな研究機関なども入っていて組織図も教育システムもよくわからないのですが、とにかく良さそうなところです。実際のところここに着くまでは日本に帰りたいとも思っていましたが、街を歩いてみて好奇心が閾値を超えました。

イメージ通りの夏の地中海。ローズマリーらしき茂みに見慣れない花が混じってとてもきれいです。花のかたちを専門にしている者としては、この景色には心動かされないわけありません。これから楽しみです(不安もまだまだあるにせよ)。

それではしばしの間、よろしくお願いいたします。

 

追記

のちのち滞在先の機関名が断りなしに記事に出てくるはさすがに不親切だなあ、と思いましたのでリンクを貼っておきます(リンク先フランス語ですが一部ページは英語に切り替え可能です)。正確には INRA は国立研究機関で、SupAgro がグランゼコールだそうです。ぼくのお邪魔しているところはそれら2機関のジョイント研究室という扱いらしいです。

 

INRA(L'INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE:フランス国立農学研究所

http://www.inra.fr/

Montpellier-SupAgro (L’INSTITUT NATIONAL D’ÉTUDES SUPÉRIEURES AGRONOMIQUES DE MONTPELLIER:定訳なし。強いて言えば「国立モンペリエ高等農学研究学院」?

https://www.montpellier-supagro.fr/