滞仏植物記

植物のかたちを研究する学生のフランス滞在日記

滞在最終日

ついにこの日を迎えました。 いろいろとトラブルもあり心が折れかける時も少なからずありましたが、たくさんの人の力を借りて予定していたスケジュールをどうにかこなすことが出来ました。あまりこの手のコメントは優等生感あって素直に書きづらいのですが、…

最終進捗報告前夜

11月4日です。フランス滞在も残り3日となりました。明日は INRA/SupAgro にて最後の進捗報告会です。そのためにこの数日の休日を消費して準備を進めてきました。最後の締めくくりをぴしっと決めて帰国後の研究――そしてまたフランスに戻ってきた日のための足…

霜月来る

11月1日。二日前に植物採集を終える。予定していた採集を何とか完了。思い出せば、8月にモンペリエに着いてからもいろいろと計画を変更した。日本から物資を送ってもらったり、予備実験をやっていただいたりもした。協力してくださったすべての人に感謝。あ…

雨ニモ負ケズ

10月28日。思ったより寒くなった。気温は3度。雨。水中の植物を採集するにはあまりにきつい条件だ。上からも下からも水が入ってきて、冷たいを通り越して刺すように痛い。寒くて全身が震えながらの作業。そんななので思うように植物が集まらない。採集の状況…

トゥールーズ、そして第二回植物採集へ

10月27日。第二回目の植物採取に来る。前日、トゥールーズに滞在。ディアヌ宅に泊めていただきご家族から暖かいおもてなしを受けて感激した。ディアヌとは今年2月以来。熱い栗を食べながらトゥールーズの古い街並みを案内していただいたり、夕飯に鴨肉料理や…

巴里を歩く―フランス国立自然誌博物館

昨日の記事に引き続きパリの記事です。今日は10月19日に訪問した「国立自然誌博物館」についての記事です。その名が示す通りここもまたデロールと同じように自然誌――つまり博物学にまつわる場所です。それも世界屈指の規模の。 「フランス国立自然誌博物館」…

巴里を歩く―カルチェラタン散策、デロールDeyrolleへ

お久しぶりです。植物採取から巴里散策を経て疲労困憊し、また少し間が空いてしまいました。今回は前回仄めかしたパリ散策のことを書きます。日付は10月18日にさかのぼります。 前回書いた通り、今回の宿泊先はパリの学生街として有名なカルチェラタンです。…

フィールドワーカの長い一日:そして巴里へ

結局、しばらく更新が止まってしまいました。植物採取は当初想像していたよりもだいぶ骨の折れる作業となりました。なにせあまり人のいないところですし基本的には一人での作業ですので……しかも最近は気温が下がり水が冷たいです(水生植物を採ってました)…

圃場到着

こちらは10月11日。ついに植物採取のためモンペリエを離れ、とある花園にやってきました。17日まで泊まり込みでの作業になりますが、ここが正念場ですから頑張りたいと思います。 さて、今日の記事はお知らせにとどめます。本当はいろいろと写真を交えて書き…

つつがなしや、ともがき

いよいよ明後日から植物採取。準備は概ね整えたられたはずだ。緊張するがフィールド作業は好きなので楽しみでもある。ここのところは数式とにらめっこする毎日だったから(これはこれでよいのだけど)実際の花が恋しい。ただ、雨が心配。今週のモンペリエは…

Le Bleuet de France

ご存知の通り、ユーロ硬貨のデザインは国によって異なります。例えば、フランスの 2 ユーロは「自由・平等・友愛」の象徴。ほかの国では(どこだったか忘れました)君主の肖像とか、あるいはそれそれの文化に由来する事物が刻まれています。 それなりに色々…

ドイツ植物学史との遭遇

このところ研究で忙しく筆が滞りました。おかげさまで来週の進捗報告には少し成果を見せられそうです。この先もうまくいけば植物形態の研究としては割と新しいアプローチを打ち出せるのではないでしょうか(と言うのはぼくの弁ではなく指導教官のヌヴ氏)。 …

折り返し地点

もう10月になりました。 すでに滞在期間は折り返し地点を過ぎ、後半に入っています。 ここからはパリやトゥールーズへの訪問や共同研究先での植物採取が予定されており、モンペリエを離れることが多くなります。慣れつつある街を離れるのは少し不安ですが、…

我らが海

こちら9月29日です。トラムの一番線に乗ってぶらぶらとしていると、Odysseum 駅の近くに水族館(というより科学館?)を見つけました。全く予定外でしたが、せっかくなので入ってみることにしました。 www.planetoceanworld.fr 外見はこんな感じ。 水族館の…

秋きたる

最近、かなり涼しくなってきた。朝などはカーディガンか何か羽織っていないと寒いくらいである。コーヒーブレイクのときに顔を合わせる面々もみな薄いセータかパーカを着ている。これからどんどん冷えていくという。この先には採取があるのだが、気候のこと…

ポール・アリオ

先日、素敵な装丁の本を買いました。 PAUL HARIOT, Atlas Coloriè Des Plantes Médicinales Indigènes 1900年に執筆されたポール・オーギュスト・アリオ著『彩色図解・先住民の薬用植物』。これはそのファクシミリ版とのことです。1900年というと第5回パリ万…

午睡あとのメモ

今日もモンペリエは快晴で、まだ少し夏の熱を帯びた風がプラタナスの枝を揺らしています。こんな日は昼寝が気持ちいいです。 すこし昼寝をし体力が回復したので今日はごく少しだけ書きます。 先日、アグロエコロジーについて触れました。 shiryukirie.hatena…

あめりおれ

今朝、意味がわからないフランス語の単語がまだ微睡んでいる頭の中に浮かんできて目が醒める。ふつふつと遠くからにぎやかな声が漏れてくるようでおもしろい。これは最近フランス語になるべく触れるようにしているからだろうか。少しづつ簡単な表現を試せる…

アグロエコロジー

唐突ですが、アグロエコロジーという言葉を聞いたことはあるでしょうか? ぼくは前にちらっと見かけたことがあった(たしか博士課程入試の頃でした)のですが、その時はろくに調べないで放置してました。 この記事のきっかけは、いま滞在している INRA がこ…

ひと月目のまとめ

フランスについてひと月が経ちました。あっと言う間です。思えば到着したころにはぎらついていた日差しも、このところ和らいできたように感じます。そして今回の滞在はだいたい80日くらいなので、折り返し地点もそう遠くないことになります。 このひと月は I…

映画鑑賞

土曜日、『この世界の片隅に』のフランス語版(”Dans un Recoin de ce Monde”)を購入した。家主ご夫妻に見せたところ、日曜の夜に見ましょうということになる。日曜の夜、ご夫妻(と途中までお客さんがいた)と鑑賞会する。 この作品に出合ったのは去年フラ…

関数ひとつ + 「紀行」のはなし

今日は INRA/SupAgro で作業。思うように捗らず、結局簡単な関数ひとつ足しただけ。わずかでも無いよりましと思って良しとする。肝心の難しいところのアイディアはもう少しで浮かんできそうな気もするが、どうなるだろう。いずれにせよ20日にミーティングが…

Pl@ntNet: 植物学と市民科学

先日「レビューをする」などと書きました。やるからにはあるテーマについて総合的網羅的に書こうと思いましたが、今回はとても難しそうです。これから書くのはまったく網羅とは程遠い記事ですが、それでも人によっては有益なものがあるのを期待します。 いま…

コーディングの日+予告

今日はCIRADにて作業。共同研究者と一緒にソースコードを書いていく。一緒にと言っても、もっぱら共同研究者がどんどん書いていく。ぼくは仕様や設定についてあれこれ伝える。さすがに開発環境の使い方を先週齧り始めた人と制作者では全く比較にならない。が…

重陽(とくに何もない休日)

金曜はブログを書いた後に研究所の同僚とその友人(以前東京にインターンシップに来ていた人たちだ)に飲み屋に誘われ、23時ごろまでビールを飲む。飲みながらフランス語を教えてもらう。親切でよい人たち。本当に楽しい時間を過ごした。 結局、この週末は特…

四半期

滞在三週目が終わろうとしている。約三か月の滞在を十二週と概算すれば、四分の一が過ぎたことになる。次の四分の一ではこちらでの研究を軌道に乗せ、研究室の人々とも色々話せるようになっていきたい(次第に、いっそフランス語が世界の公用語だったら話す…

防犯意識

昼頃、作業しながら考え事。ブレヒトの『ガリレイの生涯』にこういうようなフレーズがある。「汚れた手のほうが、空よりましだ」。ガリレイそのものの科白ではなかったはずだが、彼の性質を表現する言葉だったと思う。なにか信念のようなもの、やる「べき」…

街を歩くーLes estivales, ファーブル美術館, Palavas-les-Flots

今回はばっちり「観光」的な内容でお送りします。 先週、このブログで「les estivales」の話題を出しました。 その時は疲労のせいにして肝心の会場までは入らなかったのですが、2018年最後の機会となる今回はしっかり中を見てきました。 les estivales の様…

CIRAD

8月30日、研究指導をしてくださる研究者の方を訪ねてCIRAD (Centre de coopération internationale en recherche agronomique pour le développement : 邦訳すると「開発のための農学研究国際共同センター」あたり?) という研究機関に行ってきました。 http…

最適な文体を目指して

今朝は(内容をあえて書くことはしないが)いろいろ考えさせられる夢を見て目が醒めた。様々なことを見たり体験しこの土地が気に入りだしたところではあるが、そのうえで自分がこの滞在をどう位置付けていくのかについて改めて考えてみる必要がありそうだ。……